*NULL-0
D&D 遭遇
最終更新:
匿名ユーザー
-
view
Level 7
「だからそうじゃないって」
つるつると滑る麺をうまくフォークに巻けなくて、また、ズルっとすする。
「こう・・・ほら」
正面に座る少年が、お手本とばかりに盛大に巻いてズポッと口にいれる。それを見た向かいの少女が挑戦するが、せっかく巻きつけたパスタも口に運ぶ段階で解けてしまう。
「あー。また落ちてる・・・」
つるつると滑る麺をうまくフォークに巻けなくて、また、ズルっとすする。
「こう・・・ほら」
正面に座る少年が、お手本とばかりに盛大に巻いてズポッと口にいれる。それを見た向かいの少女が挑戦するが、せっかく巻きつけたパスタも口に運ぶ段階で解けてしまう。
「あー。また落ちてる・・・」
踊る子犬亭の酒場の片隅で繰り広げられていた微笑ましい光景を、むさくるしい男達が笑いながら見つめている。ビールジョッキを片手に踊るドワーフ達や、いかつい剣士達が集う飲み屋は、街道筋のどこにでも見受けられる宿屋であった。
「できた!」
「ステラ・・・」
仕入れた食糧やロープ、ナイフなどをせっせと背負い袋に詰めているかと思いきや、ステラは今夜の宿の小さな一室でしまうはずの荷物でつたない動物を作っていた。すっかり日が暮れて、小部屋の中にはランプが一つ。
「シン・・・ゴブリン!」
嬉しそうに、力作を見せる少女には悪いが、毛布の上の固まりはとてもゴブリンには見えない。披露されたシンが、なんともバツの悪い顔をする。
「何やってんだよ、もう。はい、水筒」
「むー、ゴブリン」
拗ねる少女はシンが差し出した、皮袋の水筒を受け取ろうとしない。
こんな少女でも、ナイフを持たせれば、男顔負けにモンスターを狩るのだから、人は見かけに寄らない。
「今日倒したゴブリンはもっと、耳がでかかっただろ?」
シンが自分の持つ水筒とステラの分の水筒をゴブリンの頭らしき所に引っ付ける。途端に少女が嬉しそうに笑って、片方の耳である皮袋を自分の背負い袋に入れる。ゴブリンが持つにしては高価なものがちらほら毛布の上に転がっている。水晶球とか、薬草である。
「明日ギルドマスターのところまで行くんだから、ちゃんと準備、な?」
「うん!」
モンスターや旅人から財宝をちょろまかす盗賊が、盗んだ財宝を捌く場所と言えばギルドであった。
「もう、ランプ消すよ」
「お休み・・・シン」
「ん・・・おやすみ。ステ―――――」
「ステラ・・・」
仕入れた食糧やロープ、ナイフなどをせっせと背負い袋に詰めているかと思いきや、ステラは今夜の宿の小さな一室でしまうはずの荷物でつたない動物を作っていた。すっかり日が暮れて、小部屋の中にはランプが一つ。
「シン・・・ゴブリン!」
嬉しそうに、力作を見せる少女には悪いが、毛布の上の固まりはとてもゴブリンには見えない。披露されたシンが、なんともバツの悪い顔をする。
「何やってんだよ、もう。はい、水筒」
「むー、ゴブリン」
拗ねる少女はシンが差し出した、皮袋の水筒を受け取ろうとしない。
こんな少女でも、ナイフを持たせれば、男顔負けにモンスターを狩るのだから、人は見かけに寄らない。
「今日倒したゴブリンはもっと、耳がでかかっただろ?」
シンが自分の持つ水筒とステラの分の水筒をゴブリンの頭らしき所に引っ付ける。途端に少女が嬉しそうに笑って、片方の耳である皮袋を自分の背負い袋に入れる。ゴブリンが持つにしては高価なものがちらほら毛布の上に転がっている。水晶球とか、薬草である。
「明日ギルドマスターのところまで行くんだから、ちゃんと準備、な?」
「うん!」
モンスターや旅人から財宝をちょろまかす盗賊が、盗んだ財宝を捌く場所と言えばギルドであった。
「もう、ランプ消すよ」
「お休み・・・シン」
「ん・・・おやすみ。ステ―――――」
ドォォン
シンがランプを吹き消して、毛布を被ろうとした時だった。
頭上でものすごい音がして、ミシミシと天井が軋み、木材や土壁がバキバキ降って来る。
頭上でものすごい音がして、ミシミシと天井が軋み、木材や土壁がバキバキ降って来る。
「ちょっ、やだっ!」
「ぐえっ!?」
一際重たい物体がシンの上に落ちた。
「ぐえっ!?」
一際重たい物体がシンの上に落ちた。
Level 8
「ここどこ!?」
「夜空?」
ステラが大穴が開いた天井を眺めて首を傾げ、降って来た物体がしゃべった。
どうやら人間らしいが。
「やだ。踊る子犬亭に着く筈だったのに、ここ、もしかして民家っ?! ちょっと貴方・・・」
隣のベッドで起き上がっていたステラを見つけたらしい侵入者が声をかけた。盗賊という職業柄追っ手がかかることもある。もしかしてとぞっとしたが、声からして女、しゃべり方からして人間だろう。
この、間抜けさ加減で追手であるはずがない。
シンは悲鳴をあげる身体に鞭打って大声を張り上げた。
ステラが大穴が開いた天井を眺めて首を傾げ、降って来た物体がしゃべった。
どうやら人間らしいが。
「やだ。踊る子犬亭に着く筈だったのに、ここ、もしかして民家っ?! ちょっと貴方・・・」
隣のベッドで起き上がっていたステラを見つけたらしい侵入者が声をかけた。盗賊という職業柄追っ手がかかることもある。もしかしてとぞっとしたが、声からして女、しゃべり方からして人間だろう。
この、間抜けさ加減で追手であるはずがない。
シンは悲鳴をあげる身体に鞭打って大声を張り上げた。
「早くどけよっ!!」
「キャァァッ!?」
飛びのくように抱きつく侵入者に驚くどころか、ステラは一言も言わずに瞼を半分閉じていた。様子がおかしい。
「ん。どうした、ステラ?」
顎を引いて、耳を澄ますステラの様子に、シンもあたりの様子を探る。
聞こえてくる蹄の音。さらに、羽ばたきまで。
「どうしよう・・・付けられていたんだわ」
「アンタ、えらく厄介な奴と知り合いなんだな・・・」
上級の術使いが昔、騎乗しているのを見たことがあった。
翼の生えた馬。
今や、あまり意味をなさない天井の向こうに、月明かりを受けて白く浮かび上がるペガサス。騎手の白いマントから月光が零れ落ちるようだった。見目麗しいが、見下ろす紫の瞳に、シンの頭の中で警鐘が鳴り響いていた。
飛びのくように抱きつく侵入者に驚くどころか、ステラは一言も言わずに瞼を半分閉じていた。様子がおかしい。
「ん。どうした、ステラ?」
顎を引いて、耳を澄ますステラの様子に、シンもあたりの様子を探る。
聞こえてくる蹄の音。さらに、羽ばたきまで。
「どうしよう・・・付けられていたんだわ」
「アンタ、えらく厄介な奴と知り合いなんだな・・・」
上級の術使いが昔、騎乗しているのを見たことがあった。
翼の生えた馬。
今や、あまり意味をなさない天井の向こうに、月明かりを受けて白く浮かび上がるペガサス。騎手の白いマントから月光が零れ落ちるようだった。見目麗しいが、見下ろす紫の瞳に、シンの頭の中で警鐘が鳴り響いていた。
こいつは危険だ。
Level 9
ステラの見上げる瞳は非情に険しく、シンは自然と脱出路を探していた。
盗賊としてまず最初に見に付ける習慣だ。
くそっ、隙がない。
当たり一帯は完全に奴のテリトリーだった。
盗賊としてまず最初に見に付ける習慣だ。
くそっ、隙がない。
当たり一帯は完全に奴のテリトリーだった。
「見つけた・・・」
意外に若い声だ。
「大人しく渡せば危害は加えないよ。君達にも。だから、地図を渡して」
「大人しく渡せば危害は加えないよ。君達にも。だから、地図を渡して」
地図?
頭をもたげる好奇心。こんな上級術者が狙うほどのお宝だ、さぞかし価値のあるものに違いない。シンは逃げること以上に、ステラの横で手を握り締める侵入者を見た。
頭をもたげる好奇心。こんな上級術者が狙うほどのお宝だ、さぞかし価値のあるものに違いない。シンは逃げること以上に、ステラの横で手を握り締める侵入者を見た。
こっちも若い女だ。
握り締めている物が、おそらく渡せといっている地図。
物騒な言葉どおりになるのもご免だ。かと言って、地図が頭上でさも当り前だと見下ろす男に渡って何事もなく終るのも癪だった。大体、この手の手合いに限って何もしないといって何もないわけはない。
シンはこっそりステラに盗賊にしか伝わらない合図を送る。
声を出さず、最低限の動きだけで意志伝達をする盗賊必須スキルその2。
握り締めている物が、おそらく渡せといっている地図。
物騒な言葉どおりになるのもご免だ。かと言って、地図が頭上でさも当り前だと見下ろす男に渡って何事もなく終るのも癪だった。大体、この手の手合いに限って何もしないといって何もないわけはない。
シンはこっそりステラに盗賊にしか伝わらない合図を送る。
声を出さず、最低限の動きだけで意志伝達をする盗賊必須スキルその2。
それを奪って逃げるぞ。
分かった。
分かった。
スイッチの入ったステラは強い。あっという間に女に当身を食らわして手の中のものを奪っていた。同時に動く上空の気配にシンが毛布を放り投げる。
寸断されて床に落ちる頃には、ベッドにはルナ以外誰もおらず、小部屋のドアが開け放たれていた。
寸断されて床に落ちる頃には、ベッドにはルナ以外誰もおらず、小部屋のドアが開け放たれていた。
白い風のように通り抜ける騎士が、まだ男達で溢れる酒場への入り口で立ち止まる。反対側のドアが揺れているのを見て、瞬時に移動する。酒に酔った男達は気付かない。
鉄の鋲が打ちつけられた扉の蝶番が軋む。
開け放たれた扉の向こうには夜の街道が広がっていて、黒い馬の影が遠ざかっていた。
「小賢しいね」
ペガサスの一蹴りで追いつき、風の刃が馬の首を切り落とす。それは地面に落ちる瞬間に黒い霧となってきて、頭を失ってなおも走りつづける馬もろとも夜の闇に解けた。
鉄の鋲が打ちつけられた扉の蝶番が軋む。
開け放たれた扉の向こうには夜の街道が広がっていて、黒い馬の影が遠ざかっていた。
「小賢しいね」
ペガサスの一蹴りで追いつき、風の刃が馬の首を切り落とす。それは地面に落ちる瞬間に黒い霧となってきて、頭を失ってなおも走りつづける馬もろとも夜の闇に解けた。
「ちょっと! ひっぱらないでよ」
「ウルサイなっ、黙れってーの!」
踊る子馬亭の地下の細い通路をシンとステラ、そして、ルナがひた走っていた。
「踊る子犬亭の仕掛けだって万全じゃねーんだ。力のある奴ならすぐ見抜く。その前に、渡し守の所まで急ぐぞっ」
街道筋の宿屋にはモンスター除けや、色々とやばい事の為に地下道が掘られていることがある。盗賊が利用するような盗賊ギルドに加盟している宿である。追手の騎士やメイジに見つからないように、様々な仕掛けが施されていた。
「ウルサイなっ、黙れってーの!」
踊る子馬亭の地下の細い通路をシンとステラ、そして、ルナがひた走っていた。
「踊る子犬亭の仕掛けだって万全じゃねーんだ。力のある奴ならすぐ見抜く。その前に、渡し守の所まで急ぐぞっ」
街道筋の宿屋にはモンスター除けや、色々とやばい事の為に地下道が掘られていることがある。盗賊が利用するような盗賊ギルドに加盟している宿である。追手の騎士やメイジに見つからないように、様々な仕掛けが施されていた。
「あんな子供でも・・・盗賊か」
続くね・・・これは続く