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空中都市ターミナル





 白い雲も近づく程に色を失っていつの間にか通り過ぎている。
 降り注ぐ太陽の光が濃淡を描いてまた次の雲の山を照らす。
 蒼穹の天蓋は何処までも続き、雲の切れ間から空を映す海が覗き、緩やかな曲線を描きつつ空と海の境界線はなかった。

「やっぱり、お前も飛空挺が好きなんだなあ」
「当たり前だろ! 男だったら一度は飛空挺乗りだぜ」

 何日も掛けてたどり着いた帝都から辺境のアプリリウスまでだって、飛空挺ならひとっ飛び。定められた道も、委ねるしかない風もない、この開放感。

「だよな。俺も、いつかはアレックスみたいに、自分の飛空挺を持ちたい!」

 飛び立って15分、セイバートリィは砂漠の遥か上空に達していた。
 下界を臨めるうちは窓にへばりついていたシンも、見渡す限りの雲海と蒼みを増した天空から目を離してヨウランやヴィーノ達と会話をするようになっていた。

「ターミナルって所までどれくらいかかるんだ?」
「半日くらいじゃないか?」

「えっ、ターミナルまで半日で行けるの?」

 シン達の会話を聞いていたキラが会話に参加する。
 軍用の高速挺ならまだしも、通常であれば半日と言わず、その1.5倍は掛かる空路である。

「そう! それがこのセイバートリィのすごい所!」
「そんじょそこらの飛空挺と一緒にしもらっちゃ困る。なんせ、最速の空賊だから」

 最速とは大きく出たものだ。
 シンは自分の知る限り、最速の飛空挺は帝国軍の高速挺の中でもフルチューンされた兄の飛空挺。

「最速って、軍の飛空挺より?!」
「勿」

 ヨウランの二つ返事に純粋な驚きとちょっとした悔しさを感じるが、キラは普通にその返事に感じ入っていた。

「だからこんな派手な色でも問題ないって事だね」
「ま、ね」
「乗ってる俺達は確実に寿命を縮めているけどな!」

「聞こえてるぞ!」

 突如割り込んだ声に、ヨウランとヴィーノが慌てて手を伸ばす。

「やべっ、掴まれ!」

 声と同時に全身に掛かる力。回転する視界。

 !!

 息つく間もなくシンは、背中に衝撃を感じて、目を開けた。
 目に入ったのは、幾つものの足と大丈夫そうに覗き込むヨウランとヴィーノ。
 一回転した飛空挺で、シン1人だけが床に転がっていた。

「イッテ・・・い、いきなり、何って事すんだよ!」
「そのとろさじゃ、飛空挺乗りにはなれないな」

 コックピットの中にアレックスの笑い声が響いた。
 恥ずかしさと悔しさとで、涙目で睨みつけるシンだった。




 朝、アプリリウスを飛び立って太陽が天頂を過ぎた頃、深紅の飛空挺が空中都市ターミナルを捉えた。空に浮かぶ島に建物があって、そこには大きな街があった。

『少女を帰して欲しくば、採石場にて待つ。逃げるなよ』

 オレンジ色の手紙を回し読みして、空中都市ターミナルに降り立った。空の上だというのに快適な気温に、地上と変わらない街並みが見える。

「どこに行くつもりだ?」 

 ヨウランとヴィーノがセイバートリィに残って整備その他買出し、シンのステラ救出にアレックスとミーア、それにキラが加わる。

「一緒に行ってくれるのかよ」

 シンと同じ方向に歩き出すアレックスに問いかける。今まで散々、彼のだらしなくて横着なところを見ているから、進んで助けてくれる姿が少し意外だったのだ。

「その少女を助けないと、報酬とやらが手に入らないのだろう?」
「ああ、そう!」
「採石場は街を向こうにある鉱山だ。さっさと行こう」

 評価がコロコロ変わる空賊に、シンは負けじと先を急いだ。
 長い階段を上り街の入り口に立つ。そこはT字路になっていて、左に折れれば九十九折の階段が街へと続く。

「こっちは何?」

 右手の大きな門の前には衛兵が鋭い槍を持って警備していた。

「バルトフェルト侯の館だよ。この空中都市の領主だね」
「帝国と王国復興レジスタンスとも繋がっている、胡散臭い奴さ。このご時勢の中、自治を守っている事は賞賛に値するけれどね」

 空中都市ターミナルをこの時になってようやくシンは思い出した。
 帝国に屈するを良しとしない自治領・ターミナル。
 算出される鉱石を主要産物として、貿易で成り立っている街。自分とてその領主バルトフェルト侯と幾度か会ったことがあるではないか。

「僕はこの方に用があったのだけど、とても会えそうにないね」

 確かにキラは、シン達とは別に用事があると言っていたのだ。
 彼はかつてのアプリル将軍だから、面識があってもおかしくはない。しかし、それを今、公にできるかどうかは情勢を見据えなければならず、見ず知らずの旅行者としておいそれと会うことはできなかった。

 俺も気軽に顔なんて出せないよな。
 そんな事をしたら最後、絶対に兄にばれるだろう。

「それなら、一緒にステラって子を助けに行きましょ」
「そうするしか、ないね」

 4人が街を抜けて採石場にたどり着くと、鉱山だけあって、ひんやりした洞窟が目の前に待ち構えていた。薄暗い鉱山のあちこちに惹かれた採石の設備。足元を照らす明かりと、取り出した石を運ぶトロッコとそのレール。

「採石場って、具体的には魔法の元になる石を掘り出すんだよな」
「ええ、そうよ。シードを含んだ石ね」
「それって、売れるのか?」

 それが、どうも、よく分からない。

「魔法を使わないシンにはイメージできないかもしれないわね。魔法の源になるシードは空中に僅かに含まれているの、そのシードを集めて魔法を使うの」

「魔法を発動するには多くのシードがいる。だから、シードを多く含んだ石はその手間を減らせるから貴重なんだ」

 途中から、ミーアに替わってアレックスが説明を乗っ取って畳み掛ける。
 足を進めた鉱山に声が木霊する。
 しかし、洞窟に響くのは声だけではなかった。

「こうもりとか!」

「ねずみの大群とか!」

「ゾンビとか!」

「なんでいるんだよ!」

 4人は行く手を邪魔するお呼びない存在を相手にしながらステラを探す。鉱山は採掘に沿って幾つも道が分岐し、行っては戻り、戻っては引き返す事を何度も繰り返す。

「シン!」

 走り通しで、疲れのためふらりと身体が傾く。運悪くコウモリの超音波で視界がゆがんでしまった。集中攻撃を受け、シンは残った3人が大慌てでそれらをやっつけた後に、へなへなと座り込んでしまった。

「だいぶ、酷くやられたね」
「薬を塗って置けば直るなんてもんじゃないな」

 引き裂かれて長袖は半そでになってしまっていたし、頬や手の甲に血が滲み、腕がざっくりと切れている。

「ミーア」
「え、あたしなの?」

 ミーアがシンの傍に座って傷の具合を確認する。

「治癒の魔法を掛けてあげる。じっとしていてね」

 ミーアが目を閉じて、胸の前でぎゅっと手を握った。
 シンはさわさわと空気が流れたと思って、目を瞠った。

 空気の流れが目に見えるのだ。
 淡い緑色の光が風のようにミーアの手の中に集まっていく。

 その手がゆっくりと開いて、手の中から光とも水とも着かないライトグリーンに揺れる何かがシンの腕にこぼれ落ちる。最初は冷たいと思った感触は、次第に暖かくなって、痛みが引いて行く。

 光が消えた時、腕に走っていた裂傷が消えていた。

「魔法・・・ミーアは魔法が使えたんだ・・・すごい」
「あら、訓練次第で誰でも使えるようになるのよ」
「俺でも?」

 ミーアがシンの腕をぺちっと叩いた。

「勿論よ」

 シンを覗き込んで、にこっと笑う。

「二人とも、和んでいる暇は無さそうだぞ」 

 アレックスの声に顔を上げれば、立ち止まっていたおかげですっかりゾンビに囲まれていた。シンもミーアも立ち上がって、ミーアは弓を引き、シンは剣を構えた。

 それから道を引き返すこと2回。
 鉱山の道の割れ目から雲海を覗くこと3回。
 シン達は今まさに採掘の現場と思われる所に出た。集まったトロッコや、人が大勢集まっていた形跡がある。木箱がうずたかく詰まれて散らかっている。

「誰もいない?」

 そんなことは無かった。
 靴音に振り向いてみれば、今まさに辿ってきた場所にオレンジ頭と金髪頭の二人が立っていた。

「ようやく着いたか」

 しかし、二人しかいない。

「ステラは何処だ!?」

 シンが叫ぶと、オレンジ頭が鼻の頭をかきながら告白した。

「あっ・・・と、その子なら、突然、走り出しちゃった」

 何となく照れくさそうに見えるのはなぜだろう。

「いい加減だね。女の子をこんな所で1人にするなんて」

 呆れた口を開いたのはキラ。しかし、オレンジ頭も黙っていない。

「失礼だな。あの子が勝手について来たから、分かりやすく教えてやったのに。まあでも、ここまでおびき寄せれば俺達的には問題ないっしょ」
「ラスティ! お前っ」

「それって逃げられたってことじゃ・・・」

 シンはここまで来てステラいないことにがっかりし、『突然走り出した』の意味を口に出していた。なるほど、確かに男二人が少女1人に逃げられてしまっては、堂々と言うのは憚られるかもしれない。

「変な事言いながら、急に凶暴になってねえ。その子を探しに行きたきゃ、行けば? きっと奥だぜ。っと、アレックスはここまでだけど」
「ミゲル・・・しつこい男は嫌われるぞ」

 ため息交じりで呟くアレックスにミーアが尋ねる。

「どうするの?」
「どうするって、俺はミゲル達に捕まる気はさらさらない」

 元々は、アレックスを追う奴らが彼をおびき出そうとステラを攫ったのだ。彼らにしてみれば、アレックスさえここに来れば目的は達したわけだ。後は、何やら揉めているらしい彼らとアレックスの問題・・・と言うわけには行かなかった。シンはダシに使われたステラを助けに来たのだ。

「何ごちゃごちゃ言ってんですか。ステラを探さないと!」

 肝心のステラがいなくてはシンがここまで来た意味が無い。アレックスのことは放って置いて、彼女の行方が気になって仕方がなかった。4人がかりで何とかたどり着けた採石場なのだ、あんな少女が果たして無事だろうか。

 居ても立ってもいられなれない。
 その焦燥が皆に伝わってくる。
 シンは言うに及ばず、キラもミーアも、勿論の渦中のアレックスにも。

「と言うわけだから、俺はここで失礼する」

 走り出したシンを追ってキラが続き、アレックスとシン達を交互に見るミーアが背中を見せると、アレックスも手を振って奥へと走り出した。

「あっ、こら待て! そっちは・・・」

 行き止まりだけど・・・。

 シン達がラスティの呟きを聞くことは無かった。
 更に奥へと進むと、ちょっとした空洞の壁が僅かに光を放っていた。

「ここは・・・」

 ミーアが胸を押さえて足を止める。
 まさに採掘の現場だった。抉れ、穿った後が残る。

「ステラ!?」

 空洞の真ん中に少女が倒れていた。
 シンが駆け寄って、ステラを抱え込む。
 冷えていたけれど、奥から体温が伝わってくる。鼓動も微かな吐息も。

 息がある。

 良かった。

 ホッと一息ついて、軽く頬を叩くと目を開けた。

「・・・シ、ン・・・?」

 自分の力で身体を起こして、シンを凝視する。その後、くるりとあたりを見渡した。自分がどこにいるか分からないといった感じでぼんやりとしている。

「あれ・・・たねいしがない」
「・・・? ステラ、変な奴らに誘拐されたんだよ。覚えてるか?」

「誘拐・・・?」

 事態が飲み込めずに彼女は、シンの周りを見上げて、びくっと震える。見知らぬ人間を見つけたのだ。シンは慌てて彼らの紹介を始めた。

「この人達と一緒に助けに来たんだよ。大丈夫、怖くないって」
「本当?」
「ああ、この人がミーア、その横がアレックスで、俺の後ろにいるのがキラ」

 ミーアがしゃがみこんで、手にキャンディーを差し出した。ステラの視線はミーアの頭の上に集中する。

「みみ・・・・・・」
「あたし、キャンベラなの。よろしくね」

 そろそろと包みを取って口に入れると、ようやく落ち着いたのかステラ立ち上がる。

「ステラ、たねいしを探しに来たの。見つけたと思ったのに、ここにない?」
「は、タネイシ?」
「うん、研究所がここで作っているって聞いたから」

 シンはポカンと聞いているだけだったが、アレックスが反応して少女を見る。

 ポツポツと話すステラは、どうやらオレンジ頭達に無理やり誘拐されたわけでもなさそうだった。タネイシやら研究所はさっぱり検討が付かないが、こんな所にずっと居るわけにもいかない。

「早くここを出―――」
「でも、ここの石を使えば人工タネイシができるかも・・・」

 シンが早く帰ろうと言おうとした矢先、ステラがトコトコと採掘中の壁に近寄る。しかし、そんなステラを放っておかない人間がいた。すばやく彼女の肩を掴んで振り向かせる。

「なんで、そんな物騒なモノを知っている。あの秘密研究所とどういう関係だ」

 問いただしたのはアレックスだった。
 凡庸と見上げるステラが口を開くが。

「え、ステラ知らない。ネオから聞いただけ、今度の狙いは人工タネイシなんだって」
「人工種石だと!?」

 驚いた彼が繰り返した時、背後から暢気な声がした。





「お取り込み中悪いんだけどさ、アレックス。お前の相手は俺達だって事忘れてない?」

 舌打ちして振り向いた彼は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
 ミゲルとラスティがすぐそこまで来ていた。
 急にアレックスがステラに掴み寄ったから忘れていたが、自分達はステラを助けてさっさとここをおさらばしたかったのだ。

「逃げなきゃやばいよね」
「どうやってさ、あいつを囮にしてか?」

 キラとシンがこそこそを逃げ出す算段をする。彼らの狙いはアレックスだから上手く差し出せば逃げられるかも知れない。けれど、キラが笑って足元の石のかけらをいくつか拾い上げた。

「残念だけど外れだよ。答えはこうやってさっ」

 言うなり拾い上げた石をミゲルとラスティに投げつけた。
 それは見事に二人にヒットして、顔を抑えてうずくまっている。となれば今の隙に逃げるしかないことなど百も承知。シンはステラの手を引いて走った。

「こら、待てっ!?」

 よろよろと立ち上がる二人の横を通り過ぎれば、彼らの声が背中に当たる。シン達は必死に鉱山の出口まで走った。途中であったコウモリやゾンビなど目もくれずに、それこそ一目散に逃げた。

 出口の明かりが見えてホッとしたのもつかの間、ずらりと並んだ警備の男達にシン達はとっ捕まった。空中都市側からすれば、大切な金蔵である鉱山に無断で侵入した犯人を捕らえに来たのであった。

 帝国兵とまでは行かないまでも彼らも鎧を身に纏い、後ろ手にシン達を拘束して護送車に乗せようとする。

「やめろよ!」
「静かにしろ、盗人がっ」

「俺達はステラを助けに来ただけだっ、何も盗むつもりなんてない!」
「黙れ、空賊の分際で!」

「分際なんて言われると腹が立つな・・・」

 アレックスが一人ごちる。

「文句を言っている場合じゃないけど」
「そうよねえ」

 シン1人が騒ぎ、他のメンバーはいたって冷静である。ステラにいたっては言われるがままに拘束されてもう護送車に乗り込んでいる。
 自分はいい。バナディーヤにも行った身だ。
 キラやミーア、アレックスだって、いざとなれば1人でなんとかするだろう。

 けれどステラは?
 ステラのことを気にしているのは、ここではシンだけなのだ。アレックスとミーアは空賊で報酬の為に付き合っている。キラも差し当たり行く所がないからだ。

 俺があの子を守らないと!

「触るなっ。俺は空賊じゃない!」
「空賊じゃないなら名を名乗れ。身の証は!」

 空賊は自由人だ。
 何処の国家にも属さないことが多い。しかし裏を返せば、ほとんどの民がどこかのコミュニティ、つまり国家なり都市に属している。国民であり、市民である。

「俺はシン。シン・アスカ・プラント。どうなったって、知らないからなっ!」

 警備兵達の動きが一瞬止まる。けれど、それだけだった。

「プラント? ふざけたことを言うな! 帝国の王子がお前のような薄汚れたガキなわけないだろう!」
「本当だったらどうする! 俺が王子じゃないって言い切れるのかよ!」

 相変わらずシンと警備兵達の問答は続くが、顔を見合わせたのはアレックスとミーアだ。そこにキラが寄ってきて耳打ちする。

「君達、自分で判断したくないなら、君達の上司にでも尋ねたら?」

 子供騙しに引っかかったというヘマはしたくない。けれど、もし本当に王子だったらと言う不安がゼロであるわけでもない。判断しかねる警備兵達にキラが助け舟を出したのだ。

「バルトフェルト侯なら王子に会った事くらいあるだろう」

 警備兵が仲間を集めて相談し、どこかに連絡を取る。
「えっ、しかし・・・ですが・・・はあ、了解しました」
 彼らは腑に落ちない顔でシン達の拘束を解いて、護送車へと乗せる。先に乗り込んでいたステラの拘束も解いて、来た時に見上げるだけだった屋敷へと続く大きな門を潜った。

「ってことは、俺、帝国の王子様に間違われたんだな~」
「えっ、どう言うこと? アレックス」

 護送車の中で、アレックスがシンを指差す。

「初めて会った時、シンの奴、俺のこと自分の兄と間違えたんだよ」

 そう言うアレックスはシンが帝国の王子であると全く信じていないのか、未だ持ってこいつ呼ばわりである。シンは上目使いに睨みつけるが相手には全く通じていない。

「えっと、帝国の王子って確か4人いたわよね」

 ミーアが護送車の天井を見上げて、唇に人差し指を当てる。うーんと何かを思い出すポーズだ。長い耳がギリギリ天井に当たりそうで当たらない。

「黒いわかめ頭の長男と今度アプリリウスに来た銀髪、それから・・・3番目が死んでて、最後、4男」
「シンは最後の4男に化けるわけだね、しっかりやりなよ」

 3人が笑ってシンを茶化す。
 全く持って面白くない。
 屋敷の前で憮然として護送車から降りる。

「判断を仰ぐだけだ。貴様らの疑いが晴れたわけではないからな!」

 賓客対応とは行かずに通用口から屋敷に入ることになったが、バルトフェルト侯に会った時の反応を予想して、シンは反撃の機会を待った。





「侯爵がお会いになります」
「やったな、キラ」

 呼びに来た小間使いにアレックスがキラに言う。シンは二人を見ると、気が付いたミーアがウィンクする。

「ほら、キラは侯爵に会いたかったでしょ。作戦成功ね!」

 俺の作戦は成功した・・・のか?
 シンは自問自答した。
 自分のことがバレナイのならそれに越したことはないし、ステラが守られるなら別にそれでいいのだ。なんとなく気を張っていたのが分かって、息を吐き出す。

「シン、どこ行くの?」
「侯爵様に会いに行くんだってさ。いい子にしてろよ、ステラ。偉い人なんだからさ」
「うん。分かった」

 と、本当に分かったのかどうか怪しいステラを筆頭に、どこか浮かれ気分の一行は重厚なドアを開けて、侯爵の書斎へと導かれた。

「これは・・・」

 目を見開く侯爵は一体誰を見ていたのか。

「懐かしい顔だ」

 シンは必死に侯爵に目で訴える。
 俺にことは秘密にしておいて欲しい!

「ヤマト将軍。無事であったのか・・・」 

 キラを振り返って、肩の力を抜く。

「それに、お久しぶりですな」

 ギギギ・・・と首が回る。油の足りない機械のようにシンはバルトフェルト侯爵を振り返った。予想される言葉。

「殿下も。家出中だと、ここまで届いているがね」

 4人の視線が集中するのが痛いほど分かった。





ここでばれてしまうわけですが、どうなるどうする?