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西方はどっちだ4

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うう~ん。ちょっと消化不良気味かも。




「お、俺にもあの呪文教えてくれ。一発で掃除が終わるアレ!」

 なんて便利なんだろうと思ったアスランはその日の内に持ちかけていたが、結果は芳しくなかった。

「遊びじゃないんだ。教えてもらってできるようになるようなものじゃない。まして、貴様は神道だろうが」

 アスランにしてみれば、その違いははっきりしなかった。神主にあるまじき心構えであるが、こんな田舎で仏教が、神教が、と争うようなことはなかったのだ。毎年の行事は何一つ変わらない。元旦は初詣に出かけ、節分には豆まきをし、桃の節句も鯉のぼりもささやかに祝う。盆には先祖を祭り、刈り取りの時期には村一番の祭りがあり、クリスマスはプレゼントを贈りあって大晦日に除夜の鐘をつく。そこに宗教の違いはなかった。

「貴様は他宗教のことより、自社を再建することを考えるべきだろう。狛犬さえおらんではないか!」
「いや、あれは去年の台風で落ちて割れて、新しい狛犬を置いてもすぐ落ちるんだよ。風の通り道みたいで、3回も割れたからもう置くのは止めたんだ」

 なんとも縁起の悪い話であるが、社もないのだと、アスランは拘りも無かった。本宮の支援を仰いでも一人では限度がある。村々を回って寄付金を募っても到底追いつかない。再建とはそれ程の大事業だった。

「そうか。なら一つ聞きたい事がある、いいか?」
「うん」
 幾分冷めてしまった夕食をつついてアスランは答える。

「貴様に纏わりつく妖気はなんだ、この村にいる魑魅魍魎はなんだ?」

 イザークからの質問を聞いて、ああやっぱり彼は僧侶だと思った。だから映画になったり、漫画になったりするのだ。悪を生かしておかないから。
「答えなきゃいけないか?」
「害を及ぼすものなら退治してやると言っているんだ」

 彼に悪気はないのだろうと思う。
「ここは田舎だよ。空気は綺麗だし、水もおいしい。村の皆はそれは優しくて、君から見たら別世界だろう。確かにここは都会と比べれば別世界なんだと思う、色々な物の霊が多く残っているからさ」
 彼のように妖気に気づいた人間なら、巷に溢れる妖怪や精霊を見るのは容易い事だろう。
「でも、別に悪いことをするわけじゃないんだ。ちょっといたずら好きなだけで」

 食べるスピードの遅くなったアスランに比べて、イザークは点でバラバラの余り物の食卓を効率よく消化していた。


4:星に願いを


 なるほど、のんびりもここまで来れば拍手物だ。
 アスランは悪いことをするわけではないと言ったが、その夜、イザークが見つけたのは到底穏やかではない代物だった。
「あいつはああ言っていたが・・・これは調伏したほうがよかろう!」
 境内からゆらりと立ち上る白い霧が形を無数に変えながら、本堂へとゆっくり近づいてくる。ちかちか光る砂利を目に留めながら、イザークは笑った。
 この程度の下級霊など、真言を唱えるまでもない。
 すばやく指を立てると、身体の前で空を切った。

「イザーク、待ってくれ!」

 背後で異変に気がついたアスランがドタドタやって来るの聞こえたが、構わず口を開いた。

「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!」

 空気の刃が白い霧へと迫り、―――そのまま境内の木へと叩きつけられた。グオンと木が大きく唸って、冬でも葉を落とすことのない枝を激しく揺らした。

「貴様! 何をしたっ」

 いや、何をしたかは明白だ。イザークの九字を妨害したのである。あっという間にイザークを追い越したアスランが白い霧に向かって一言叫んで、ポロリと地面に何かが転がった。吸い込まれるようにして消えていく白い霧を見て、イザークは見にまとう微弱な妖気の正体を知った。
 退治せずに封印し、その石を拾い集めているから、拭いきれないのである。
「これで充分だよ。たいした力もない」
 指でまだ封じの術をかけているアスラン。イザークが歩いていくと、ひょいと拾い上げる。
「大丈夫さ」
「いつもこんなことをしているのか」
「いや、滅多にないよ。最近じゃ、参道の入り口で二つ封じたくらいかな。大抵は通り過ぎるか散ってくれるから・・・それよりさ!」
 甘いな、それではいつか足元をすくわれる。この片田舎では早々大物はでないだろうが、霊も悪意があればすぐ成長する。イザークはついそんな事を思った。
「あれ、九字って言うんだろ!?」
「駄目だ」
 先手を打つ。アスランも結果を予想していたのか、物々言いながらも大人しく引き下がった。が、突然大きな声を上げた。
「あーっ、またあんな所にある。ついでにあの石達も拾ってきてよ。足元に黒いのと白いのがあるだろ?」

 アスランが地面に見つけた石は、いつも奴がせっせと運んでいた石に似ていた。
 真っ暗な参道まで歩いて、拳大の石を見つけて手を伸ばす。両脇は木々に囲まれて、夜空より深い闇を作っていた。
「5日しか居ないんだ」
 気にした所で長居はしないのだから、あまり関わらないほうがいい。年が明ければ、またお山に戻り、目の回るような忙しさが待っているだろう。呑気に石拾いどころではない。
 手の中の黒い石はやんわりと赤い光に包まれていた。
 イザークは石が放つ霊力に眉を顰める。
 もしかして、この石にも何かの霊が封じられているんじゃないのか?
 しかも、いつの間にか参道に転がっていくとなると・・・。参道の先にある主の居ない台座を暗闇の中に見つける。イザークは、真っ黒な石と真っ白な石を見て気がついた。

「お前達、災難だな・・・」

 悪霊と間違って封じられた狛犬達を不憫に思った。




まあ、なるようにしかならないか。ちゃんと終われるかな。毎度の事ですが、タイトルに深い意味はありません。やー、最初の方は何かをこじつけようとしていた気もするけど、駄目だ思いだせない。



カテゴリ: [ネタの種] - &trackback() - 2007年01月13日 21:15:40

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