暗闇で崩壊が始まっていた。
ジョミーに最後の一撃を放った後、倒れたグランドマザーは本当に巨大な瓦礫と化してしまっているのか、地下の巨大空間が軋み始める。キースは少し頭を動かして前方を見つめた。
キース!?
ジョミーの思念波が聞こえたが、そのまま身体を起こした。体の感覚が麻痺し痛みを感じないのがありがたかった。剣を刺したままだったから、出血も最小限に抑えられた。
振動はもはや立っていられないほどひどくなり、亀裂の入った天井からは瓦礫が降ってくる。このまま2人とも息絶えるのを待つだけだった。グランドマザーが放った残りの剣を支えに立ち上がる。
そんな身体でなにをっ!?
ぐぅ。
さすがに身体全身に鈍い痛みが走る。
「グランドマザーの後始末だ」
巨大なマザーヘッドが転がっている。各惑星のマザー、テラズナンバー、教育機関全てのマザーは全て繋がっていて中央電脳として機能していたグランドマザー。
「アレでも一応、私の母だしな」
一歩が果てしなく遠かった。
足元から失われていく感覚に不思議と、頭だけは鮮明になっていく。
私の過去。私の故郷。
それは人ではなかったけれど、確かに私は彼女に育てられた。あの時、彼女はああ言ったが私にもかけがえのない絆ができた。
見上げるほど大きなグランドマザーの顔の瞳にはもう光はなかった。
微笑んでいるのか、嘆いているのか、それとも貴方の期待にこたえなかった事を憤怒しているのか表情は分からない。彼女はもう何も答えない。
人類の進化を信じられなかった先達の命じたままに、SD体制を維持し、ミュウの実験を続けたマザーは本当は、終わりを望んでいたのかもしれない。
その為に私が生まれたのだと。
貴方にピリオドを打つために。
キースはグランドマザーの石造りの頬の下で腰を下ろした。背中を預けて真っ暗な天井を見上げる。
「貴方の役目は終わったのだ。もうーーー眠ってくれ」
一際大きな破壊音を立てて、崩れていく。ジョミーが眠る場所も既に瓦礫に埋もれてしまった。何かを残せた彼は幸せだったろうか。
亀裂は足元にも及び底が抜けた。上空から降ってくる瓦礫と奇妙な浮遊感に意識が飛んだ。
ようやく生まれたテラの子。
愛しい子よ。
お前には美しい青い地球を。
いつか還る時の為に。
地表に突き立てられた炎の墓標から
地球の再生が始まる。