「純。生きてたか」
「熊さんも・・・」
ここは、川越近くの山中の、とある洞窟の中。
チュプライ党の隠れ家のひとつでしょう。
ようやく熊八さんと再会できました。
とはいえ、熊八さんも捕らえられていたわけで・・・。
チュプライ党相手に激しく戦ったそうですが、
ついには毒矢に倒れたそうです。
しかし、彼は死にませんでした。
死ななかったどころか、あっという間に体力を回復したようで、
今はぴんぴんしています。
もっとも、チュプライ党によって、
縄でがんじがらめに縛られていましたが。
ただの縄ではなく、何かの呪が込められているようで、
さしもの熊八さんも無力なようでした。
「カプレンケの毒矢で死ななかった人ははじめて」
例のアイヌ娘が呆れていました。
彼女の名はチュプ。
「月」をその名としているわけです。
その彼女がチュプライ(月蝕)党の一員だとは・・・。
彼女によると、チュプライ党の首魁は彼女の父で、
ペッチャタコタンの長老は彼女の祖父なのだとか・・・。
僕はこれには驚かされました。
長老と彼女の父は意見があわず、
とても仲がいいとはいえないようです。
長老は平和を愛する人です。
暴力で物事を解決することを嫌っています。
しかし、「日出人皆殺し」を叫び、
アイヌの人々に武力蜂起を説いて回っているのが、
チュプの父・・・長老の息子なのです。
チュプライ党の刺客に僕らが襲われたときの、
あの苦しそうな表情の意味が、今ようやくわかった気がします。
チュプライ党から、長老へ正式に援助の申し出があったようです。
(僕はあわててねず吉をコタンに送りましたが、
コタンの人々はすでに危険を知っていたのでしょうね・・・)
しかし、長老はそれを断ったらしいのです。
「コタンを火の海にはできぬ」
そう言ったそうです。
挑発にのって戦端をひらけば、コタンが火の海になる。
そう考えたからでしょう。
しかし、僕は川越奉行と芦尾どのの会話を聞いています。
どうあっても彼らはコタンを火の海にする気だとおもいます。
そのことを彼女に告げると、チュプライ党でもそう考えているようで、
各地のコタンから、
戦士たちがペッチャタコタンに終結することになっているとのこと。
同時に長老への説得も続けているそうです。
「あなたをわざわざ助けたのはね・・・」
「君に助けてもらった覚えはないけどね」
「あなたをわざわざ助けたのはね・・・」
「・・・・・・」
彼女は僕の反論を黙殺しました。
「あなたをわざわざ助けたのは、簡単に言えば、取引のため」
「取引だって?」
「熊八を解放するかわりに、協力してほしいことがあるの」
「・・・」
「敵を牽制して、コタンに戦士が集まるまでの時間を稼ぐ。
そして、できれば・・・
川越奉行・澤田兼久と、陰陽師・芦尾忠保を殺す。
その手伝いをやってもらうわ」
言葉になりませんでした。
あらぬ誤解を受けて罪人に貶められ、
牢破りまでして逃げ出してみれば、
今度は暗殺屋の片棒を担げといわれる。
それも親友の命と引き換えに。
父さん、蛍・・・。
僕はもうどうしていいかわかりません・・・。
「熊さんも・・・」
ここは、川越近くの山中の、とある洞窟の中。
チュプライ党の隠れ家のひとつでしょう。
ようやく熊八さんと再会できました。
とはいえ、熊八さんも捕らえられていたわけで・・・。
チュプライ党相手に激しく戦ったそうですが、
ついには毒矢に倒れたそうです。
しかし、彼は死にませんでした。
死ななかったどころか、あっという間に体力を回復したようで、
今はぴんぴんしています。
もっとも、チュプライ党によって、
縄でがんじがらめに縛られていましたが。
ただの縄ではなく、何かの呪が込められているようで、
さしもの熊八さんも無力なようでした。
「カプレンケの毒矢で死ななかった人ははじめて」
例のアイヌ娘が呆れていました。
彼女の名はチュプ。
「月」をその名としているわけです。
その彼女がチュプライ(月蝕)党の一員だとは・・・。
彼女によると、チュプライ党の首魁は彼女の父で、
ペッチャタコタンの長老は彼女の祖父なのだとか・・・。
僕はこれには驚かされました。
長老と彼女の父は意見があわず、
とても仲がいいとはいえないようです。
長老は平和を愛する人です。
暴力で物事を解決することを嫌っています。
しかし、「日出人皆殺し」を叫び、
アイヌの人々に武力蜂起を説いて回っているのが、
チュプの父・・・長老の息子なのです。
チュプライ党の刺客に僕らが襲われたときの、
あの苦しそうな表情の意味が、今ようやくわかった気がします。
チュプライ党から、長老へ正式に援助の申し出があったようです。
(僕はあわててねず吉をコタンに送りましたが、
コタンの人々はすでに危険を知っていたのでしょうね・・・)
しかし、長老はそれを断ったらしいのです。
「コタンを火の海にはできぬ」
そう言ったそうです。
挑発にのって戦端をひらけば、コタンが火の海になる。
そう考えたからでしょう。
しかし、僕は川越奉行と芦尾どのの会話を聞いています。
どうあっても彼らはコタンを火の海にする気だとおもいます。
そのことを彼女に告げると、チュプライ党でもそう考えているようで、
各地のコタンから、
戦士たちがペッチャタコタンに終結することになっているとのこと。
同時に長老への説得も続けているそうです。
「あなたをわざわざ助けたのはね・・・」
「君に助けてもらった覚えはないけどね」
「あなたをわざわざ助けたのはね・・・」
「・・・・・・」
彼女は僕の反論を黙殺しました。
「あなたをわざわざ助けたのは、簡単に言えば、取引のため」
「取引だって?」
「熊八を解放するかわりに、協力してほしいことがあるの」
「・・・」
「敵を牽制して、コタンに戦士が集まるまでの時間を稼ぐ。
そして、できれば・・・
川越奉行・澤田兼久と、陰陽師・芦尾忠保を殺す。
その手伝いをやってもらうわ」
言葉になりませんでした。
あらぬ誤解を受けて罪人に貶められ、
牢破りまでして逃げ出してみれば、
今度は暗殺屋の片棒を担げといわれる。
それも親友の命と引き換えに。
父さん、蛍・・・。
僕はもうどうしていいかわかりません・・・。